創業は1964年、洋菓子店として今年で56年目を迎えます。生菓子やバターケーキ、クッキーの他、冷凍菓子の販売もしていて、常時60点ほどを店内に並べています。中でもいちばん人気はエルベランクッキーで、通販も含め売上全体の40%を占めています。
コロナショックが起きるまでは、1日120人ぐらいのお客様がいらっしゃってましたが、緊急事態宣言後は半分ぐらいに減って、売り上げも半減。いつも満車になる駐車場がめちゃくちゃ空いてたので、半分は県外からのお客様だったんだというのがよくわかりました。
今は通常営業に戻っていますが、その時期は営業時間も短縮し、商品数も半分に絞っていました。その中でよく売れたのは、クッキーよりむしろショートケーキで、家にずっといると甘いものをパクっと食べたくなるからかな…と。電車も使えない時期やから、自転車や歩きで近隣の方が来てくださったと思います。
もともとエルベランは、他所から来られた方のお土産需要がすごく高くて、そのため売り上げがガクッと下がったんです。でも下がってみてすごく感じたのは、常連のお客様がめちゃくちゃ大事だなということ。この人たち逃したら商売できひんってのがはっきりわかりました(笑)。
その一方で、外のお客様にどうやってアピールしていけばいいかも思案しました。例えば、今までホームページは情報を置いておく場所みたいな、とりあえず見てもらったらええわぐらいのゆる~い感覚だったんです。でも、そこで販売してちゃんと売り上げを確保できるサイトにしようと、オンラインショップですぐ目につくよう、検索上位になるよう文言を変えるなど工夫しました。コロナショックはありましたけど、商売的にはすごい成長に繋がったかもしれないです。考える時間だったんですね、自分の中でも。
もちろん、4月に売り上げが半分に落ちたときは、「ケーキ屋ってなんなんやろなぁ」と僕も凹みました。そう思ってたときにコールドスリープ便のアンケートが帰ってきてて…。
あ、コールドスリープっていうのは、「冷凍冬眠」っていう意味なんですけど、できたてのお菓子を冬眠状態でお客様の元へお届けして、お客様のところで目覚めさせてもらうっていう商品です。再生医療用の細胞を冷凍するプロトンっていう特殊冷凍機がうちにあるので、エルベランで販売している生のケーキをその機械で冷凍して発送するっていうのを4月にモニター募集してテスト販売したんです。
その時のアンケート用紙に記入いただいた内容を見て、求めてくださるお客様がいて、エルベランの役割がちゃんとあるんだというのに気づかせてもらいました。「お菓子を通して、人と幸せを結びつける」っていうのが僕らの仕事なんだと…。
「ホールごと丸々冷凍する」というのは、コロナショックがなければ思いついてないし、やってなかったと思います。それと同じように、この時だから生まれた商品がもう一つあって、いま店のイチオシなのが「しあわせの青い鳥」というクッキー缶です。
去年の春頃からデザイナーさんとずっと「なんかイメージと違う」ってなかなか進まなかったんですが、暮れ頃にようやく「これええやん」っていうのがまとまって、完成したのがゴールデンウィーク明け。缶に羽の青い鳥がデザインされていて、「しあわせの青い鳥やんこれ」みたいな感じで名前を決めました。中の容器には、僕がデザインした「エルベー」という猫のキャラクターと、吹き出しで「どうかあなたが幸せでありますように」っていうメッセージを入れています。
「お菓子を通して幸せになってほしい」っていうのを言葉で表したっていう商品なんです。コロナショックで、僕と同じように落ち込んだ人もたくさんいたと思うけど、でもその中からこういう風に気づくこともあるんだというメッセージを入れたくって…。その他に造花の葉っぱも入ってて、缶を開けるとぽわ~んと飛び出す癒し効果倍増の仕掛けです。実は僕、得意なんですよ、こういうディスプレイ。店の装飾も全部自分でやってるんです。
この商品は1年前から企画していた缶なので、いつかはできてたと思うけど、コロナ禍でなけれ僕が思ってることをみんなに伝えたいっていう商品にはなってなかったと思うんです。このタイミングでバシッとハマったっていうのは、導かれたみたいに不思議な縁かな。
西宮って結構スイーツの街っていわれてますが、「西宮洋菓子研究会」っていうグループを15社ぐらいが参加して作ってるんです。僕らも皆さんに何か還元したいっていう思いがあって、スイーツライブという洋菓子のフルコースを100人のお客様に提供するみたいなイベントや、夏休みの子供お菓子教室とかをやっています。でも今年はちょっと無理そうですね。
まだメンバーとは集まれてないんですけど、新しい形で何かしたいなと思ってます。皆さんを元気付けようと思ったら、人が集まる企画しか出てこないですが、今は集まれない。できないできないでは、何も変わらないので、例えば材料を発送して実際にシェフと一緒に作りましょうみたいな、リモートのお菓子教室なんていうのもありかなと思うんです。集客じゃない方法で人を幸せにする方法を考えないと、というのがいちばんの課題ですね。
〒662-0063 西宮市相生町7-12(阪急電鉄夙川駅北側)
TEL:0120-440-380(通常電話) 0798-74-4349
営業時間:水木金土日:AM9:30~PM12:30、PM1:00~PM6:00
毎週 月曜日:クッキーデー(ギフト商品のみの販売となります)
AM10:00~PM12:30、PM1:00~PM4:00
定休日:毎週 火曜
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