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山本 英一(やまもと えいいち)関西大学 国際部 教授

『”オンライン留学” という学びがあってもいい』

西宮にご縁があったのは、中学・高校から大学の途中までの7年ほどです。そのあとは川西の方に住んでいますが、青春の一番いい時期を西宮で過ごしたので、たくさんの思い出があります。西宮北口の近くに住んでいたのですが、震災で景色が変わってしまいましたね。僕が住んでいた辺りも、建物はもちろん区画そのものも変わってしまって、昔の雰囲気がなくなっているのが少し悲しいですね。

今でこそすごく「街」の雰囲気ですが、僕が知っている西宮北口は、本当に「田舎」という感じでした。市場や球場(阪急西宮スタジアム)があってにぎやかはにぎやかだけど、そんなに整備されていなかった。すごく変わってしまってちょっと寂しく感じます。

外国語に興味があって大阪外語大に進学しました。大学院を出てそのまま近畿大学に就職し、1994年に関西大学に移りました。そもそも外国語に興味を持ったのは何かコミュニケーションをしたいからではなく、英語そのものが面白いと感じたからです。書いてあることがわかる、聞いたことがわかるのがすごく楽しくて。普段学生たちに指導している「ツールとしての英語を身につけよう」という動機とは違って、とにかく英語を学ぶこと自体が楽しかったんです。

昔の学生は英語を話すのを嫌がっていましたが、今は片言でも積極的に話そうとする姿勢があり、だいぶ変わってきたと感じます。ただ、もともとの文法の知識や、単純なトレーニングをして定着するような学習をやっていないので、バラバラの単語を並べるだけという感じです。

コミュニケーションのいいところは、単語の羅列でも相手はわかろうとしてくれるので、一応は通じるんですよね。ただ、通じてはいるんだけど、きちんとしゃべったり書いたりということができない。もともとトレーニングを受けていないので、その良い面と悪い面が見えてきたように思います。

コミュニケーションに関していつも本当に思うのは、言葉の出来不出来はあったとしても「誠実にやりましょう」ということ。「至誠天に通ず」(*1)じゃないですけど、結局行きつくところはお友達作りなので、まじめに誠実に対応することが大切だと思います。多少言葉がうまくできなくても「この人はまじめだ」「誠実だ」と思ってもらえたら、その瞬間にコミュニケーションは成立すると思うので。

後期からキャンパスに学生が戻ってきています。いろいろ言われていますが、オンラインの授業もうまくいっていたんですよ。教室でやるよりも学生たちの反応がよかったり、けっこう濃密な授業ができていたと思います。ただ、リアルタイムでなくオンデマンドの授業は、課題ばかりでしんどかったかもしれません。いろんな会合でも、学生たちの顔つき、顔色がよくなってきたねという話は聞きますね。やっぱり前期は友達に会えなかった子たちが多かったので。

せっかくオンラインで教育を始めたので、うまく活用して海外の大学ともつないでいくことをやってみたいですね。今あるのは「オンラインで留学しませんか?」というお誘いです。学生がどこまで魅力に感じるかわからないけれど、オンラインで現地の授業を取る。時差の問題はありますが、実際にそんな話をいただいています。現地の生活に触れられないのは残念ですが、そういう形での”オンライン留学”みたいなものがもっと出てきてもいいかなと思います。

もうひとつ大学の取り組みとして、授業の一部を海外の大学と結んで、双方の学生たちが一緒にプロジェクトを進める――「コイル」と呼んでいますが、そういう授業をもう少し広げていくのはありかなと思います。従来型の対面授業に戻るのはいいですが、対面でやりながらもオンラインで海外につながっているとか、反転授業(*2)にするとか、これを機にそういう方向を進めていくのもいいのではないかと考えています。

 

 

 

*1 至誠天に通ず:

孟子の言葉で「まごころをもって事に当たれば好結果がもたらされる」という意味。

 

*2 反転授業:

対面授業と自宅学習を反転させた新しい授業スタイル。従来は、まず学校の授業で基礎的な知識を習得し、その知識を用いて自宅で宿題などの学習を行うのが一般的。反転授業では、まず自宅で動画等を使って基礎的な知識を習得(予習)し、学校の授業はその知識を用いて応用問題を解いたり意見交換・質問をする場となる。